はじめに
前回までに、コーチングの3大スキルである「傾聴」「承認」「質問」のスキルを学んできました。今回はいよいよバラバラに学んできた3つのスキルを統合し、実際のコーチングの流れをつくっていきます。
ここまで学ぶことで、コーチングの基礎が完成します。それでは早速学んでいきましょう!
GROWモデル
実はコーチングにはさまざまな種類があります。進め方にもいろいろあるのですが、今回は汎用性が高く効果も高いGROWモデル(グロウモデル)を扱います。
GROWモデル
①Goal(目標を明確にする)
②Reality/Resource(現状を把握し、使える資源を確認する)
③Options(具体的な解決策をあげられるだけあげる)
④Will(選択肢の中から取り組む行動を選び、期限を決める)
コーチングを進める際に、GROWの順で進めていきます。
①Goal(目標を明確にする)→②Reality/Resource(現状を把握し、使える資源を確認する)→③Options(具体的な解決策をあげられるだけあげる)→④Will(選択肢の中から取り組む行動を選び、期限を決める)の順で進めるのです。
では、個別に1つずつみていきましょう。
Goal(目標を明確にする)
コーチングのスタートは、目標・目的の確認です。具体的にどうなりたいのか、どうありたいのかを確認し、明確にしていきます。
例えば、こんな質問が効果的です。
- 目標・目的を引き出す
「どういう状態になればいいと思う?」
「何を達成したい?」
「何のために目標を達成したい?」
「解決したいことは何?」
「理想の状態はどんな状態?」- 過去の達成感の経験に焦点を当てる
「何をしているときに充実感を感じた?」
「これだけは譲れない、と思っていることは?」
「時間を忘れるほど熱中したことは?」- 真に叶えたい目標かどうか確かめる
「なぜその目標を達成したいの?」
「その目標を達成することは、あなたの人生でどれくらい重要?」
「その目標について、どれくらいの時間をかけて考えている?」
「その目標を達成したあとに、チャレンジしたい目標はある?」
この会話の最中は、ずっと「傾聴」「承認」「質問」です。
「傾聴」「承認」「質問」をしながら、GROWの流れを進めていきます。
Reality/Resource(現状を把握し、使える資源を確認する)
Goalのフェーズで目標が明確になったら、次は現状の把握に移ります。その際に使えるのが、スケーリングという技術です。
スケーリングは、「目標達成を10点(100点)満点としたとき、いまは何点?」のように相手に質問し、採点してもらうことで振り返りの質を高めるテクニックです。
コーチ:「目標達成を10点(100点)満点としたとき、いまは何点?」
A:◯点ですね…
コーチ:そっか、◯点か!ちなみに取れたほうの◯点は、具体的にどんなところができていたと感じるか教えてもらえる?(取れた点数について深堀りする)
A:〇〇はとくできたと思います。コーチ:〇〇はできたんだね!じゃあ反対に◯点を減点した理由を具体的に教えてもらえるかな?
A:〇〇ができていませんでした。(減点した点数について深堀りする)
コーチ:なるほど、次は〇〇ができたら目標達成できそうなんだね!では、次に1点でもあげるためには、具体的に何をしていこうか?(具体策を考える)
このように進めるイメージです。
今回の会話も、最後には具体策の検討に入りましたね。ここで資源の確認を行います。誰かの助けや協力を得られないのか、自分が持っている強みは行かせないか、いま使い切れていない資源はないか確認していくのです。資源を確認しながら、具体策を考えていくことになります。ですから実際には、Reality/ResourceとOptionsのフェーズはグラデーションのようになっていて、明確に切れ目がある訳ではありません。
Options(具体的な解決策をあげられるだけあげる)
では、目標が明確になり、現状・資源の把握ができたところで、具体策をブレーンストーミングしていきます。とにかく考えつく限りできることを列挙します。そのときには、次のような質問や役に立つでしょう。
「自分の行動の何が変わるとうまくいきそう?」
「10分時間をつくるとしたら、いつ?」
「もう出しつくした?」
「本当に他にもうない?」
「(うまくやっているモデルになる人をイメージさせて)〇〇さんだったら、なにをやりそう?」
Will(選択肢の中から取り組む行動を選び、期限を決める)
次はOptionsのフェーズで発散した情報を収束させていきます。たくさん挙げた解決策の中から、自分で優先順位付けを行い、具体的に行動することを選びます。
大事なことは、自分で決めてもらうこと。自分で決めるからこそ、実行可能性が高まります。歯がゆいくもあるかもしれませんが、ぐっとこらえて傾聴です。
「何からだったらできそう?」
「今日1つだけやるとしたら?」
「いつまでに?」
SMART目標
具体的な行動を決める際に、以下の項目を意識するとよいでしょう。
- Specific(誰が読んでもわかる具体的な表現・言葉で書かれているか)
- Measurable(目標の達成度合いが測定可能で客観的に成否を判断できるか)
- Achievable(達成可能性があり、無謀な目標になっていないか)
- Related(目標に関連しているか)
- Time-bound(時間制約があるか)
私がコーチングを勉強している際、「ブックエンドを立てる」と表現されているものがありました。本を並べていっても、雪崩のように倒れてしまいます。そうならないように、要所でブックエンドを挟むことできれいに立てていくことができますよね。
毎回のコーチングの終わりは、Willを決めてブックエンドを立てます。次回までの宿題・目標・TODOを自分で納得感を持って立ててもらうことで1つのコーチングセッションは終了です。
おわりに
今回はコーチングプロセスということで、一連のコーチングの流れをご紹介しました。ここまでで、ベーシックなコーチングはできるようになっています。
しかしながら、コーチングは大変奥深く、これだけでは対処ができないことや、もっとうまくやる方法があるのです。次回は、もう少し実践的な場面を想定して、私たちのコーチングの技術を肉付けしていきたいと思います。次回も頑張りましょう!