はじめに
前回は、コーチングの3大スキルから「承認」をご紹介しました。「承認」を行うことで、人のやる気を引き出し、目標達成に向けた行動を定着させることができます。
人は自分ひとりで努力するのが苦手ないきものです。最初は頑張れても、すぐにガス欠になってしまう…
「承認」は、頑張るエネルギー、ガソリンのようなものです。「承認」なしでは、なかなか頑張れないものですから、私たち関わる大人がしっかり補給してあげる必要があります。
さて、今回はいよいよ3大スキルの中でも、コーチングの中核をなす「質問」のスキルについて学びます。
質問とは
質問とは、問いかけることで相手の内側にある答えを引き出してくコーチングの核となる技術です。実は質問のタイプには次の2つがあります。
- 限定質問…Yes/Noで答えられる質問
例)部活に入っている? - 拡大質問…Yes/Noで答えられない質問
例)どんな勉強をしたの?
限定質問は選択肢が限られているため答えやすく、拡大質問は答えにくいという特徴があります。では、会話の流れを考えたとき、どちらの質問から話を進めるのがよいでしょうか?
そう、お察しの通り、限定質問からスタートし、拡大質問に発展させていくほうが効果的と言われています。答えやすい質問でラリーをはじめ、信頼関係を構築しながら本質に迫るのです。
チャンクダウン
では、「質問」のスキルをさらに高める、チャンクダウンというテクニックをご紹介しましょう。チャンクダウンとは、粒度の大きい質問から始め、その後徐々に具体的なレベルにまで質問を落とし込んでいくことをいいます。
例)
A:テストの点数あまりよくなかった…
B:点数があまり取れなかったんだね。じゃあ、次のテストに向けて考えていることはある?
A:もっと勉強しないと、って思ってる…
B:もっと勉強しなきゃって思ってるんだ。ちゃんと次のこと考えられていて素敵だね!じゃあ、どんなことを勉強しようとおもっている?
A:数学の点数が低かったから、数学を勉強しようかなって…B:そっか、数学を勉強したいって思っているんだね。じゃあ、数学のどんなところから勉強したい?
A:まず〇〇がよくわからないから、そこからかな。
B:わからない場所がわかっているのすごいじゃん!じゃあ〇〇は、いつから、どうやってやっていこうか?
A:今日から、ワーク解こうかな…B:オッケー!さっそくやってみようと思っているんだね!すごい!じゃあ早速頑張ってみよう!
このように、「質問」をしながらテストの点数が取れなかったという事実を深堀りし、具体化していきます。
結果が出なかったときのアプローチ
一生懸命がんばってはみたけれど、結果にならなかったという場合もあるでしょう。そんなとき、私たちはどのように関わるべきでしょうか。
私も親ですから、お気持ちはよくわかります。なんでこんな点数?どうしてできないの?カーっと血が登って、つい口から出てしまう文句。
一応その場ではスッキリするものの、子どもたちの心には「私はできないんだ…」という感覚が残ります。
結果は出なかったかもしれない。だけど今回はいつもより努力できた。でも、怒られた。
これでは、努力の価値を味わうことができません。
やる気を引き出すアプローチ
肯定質問+未来質問
例)「今回はワークの期限を守って提出できたよね?」+「これからどうしていこうと思ってる?」
肯定的な表現と未来志向の質問は、これからの改善点を自ら考えてもらうことにつながり、モチベーションを引き出してくれます。
やる気を減退させるアプローチ
否定質問+過去質問
例) 「どうしてこの点数なの?」+「なぜできるまでやらなかったの?」
私たち大人がついつい使ってしまう否定的な質問と過去に目を向けた質問は、子どものできなさに焦点があたり、できない自分を強く自己認識してしまいます。できないという感覚を持ってしまうことは、非常にもったいないことです。「なぜ」「どうして」+過去形の表現は特に気をつけなければいけません。
おわりに
今回はコーチングの中核をなす「質問」の技術を学びました。私たちは、子どもたちにやる気を出してもらうことがゴールです。ですから、やる気を減退させてしまう関わりは避けなければいけません。子どもたちが学ぶことはもちろん、関わる大人も学ぶべきですし、同時に試されているともいえるでしょう。
次回は、個々に学んできた「傾聴」「承認」「質問」を線でつなぎ、実際のコーチングの流れを学びたいと思います。ここまでくれば、コーチングの初歩はOK!実際に活かせる場面が増えるはずです。
次回も頑張りましょう。